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映画『31年目の夫婦げんか』を見て

事前にあまり内容を知らなかったのですが、カウンセリングネタだということで勉強のためにと、昨日アマゾンプライムで視聴しました。

31年連れ添った夫と、しばらく夜の生活がご無沙汰なこと、毎日がマンネリ化していることに不満を抱く妻(メリル・ストリープ)が、夫(トミー・リー・ジョーンズ)を半ば強引に1週間の滞在型夫婦カウンセリングに連れ出し、ラブラブカップルへの再起を図る、という話。

まず、メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズはさすがの名演技でした。
カウンセリングの現場での抵抗や、様々な感情が吐露され解放されていく様子、長年凝り固まったものがしだいに変容していくさまなど、とても自然に演じられていました。

心理的アプローチとしてもいろいろ参考になったので、今日はこの映画のレビューを書きます。

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※以降ネタバレになります。

子どもたちは独立し、いつの間にか寝室は別。夫が毎日同じ時間に出勤、帰宅し、同じ朝食を食べ、同じテレビ番組を見て、最低限の日常会話を交わすというありきたりの日常に、妻は寂しさを抱えています。

いわゆるデッドゾーンの状態ですね。長年連れ添ったカップルが陥る万国共通のパターン。

ある日、覚悟を決めた妻が思わせぶりなネグリジェを着て夫の寝室に行き、「今夜は一緒に寝たい」と伝えるが、「今日は気分が悪い」と拒絶される。
がっかりする妻。

夫婦の関係を見つめ直そうと、本屋で手に取った結婚生活の指南書を夢中で読んだあと、その著書である心理カウンセラーの夫婦カウンセリングを受けたいと夫に告げます。

夫は突然の妻の申し出にびっくり。なんていったって、自分達の関係はうまくいっていると信じていたのだから。。。
信じているというより、そこにある問題に光を当てようとしない、というのがほんとうでしょうね。

さて、最初は「絶対に行かない、一人で行ってこい」と突っぱねていた夫も、結局は飛行機に乗り込みます(潜在意識ではなんとかしたいと思っているわけです)。
1週間滞在する海辺の小さな町にやってきたものの、まったく乗り気になれず、カウンセラーに対しても横柄な態度で、セッション終了後も、あいつはペテン師だとかなんだとかいって、不満、怒り炸裂の夫。

妻のことは愛しているし、真面目に働き家庭を支え、浮気もせず、ケンカするような問題も起きていないのに、いったい何を修復する必要があるのかと。

一方妻の方にとってはこれは切実な問題です。
時折でも求められれば、自分はまだ女性として魅力があるのだと再確認できるのだが、何年もの間、キスもちょっとした触れ合いも何もなかったら、、、
女性にとってはこれは単なる性的欲求不満ではなく、自分の存在価値の有無にまで関わってくる大事なわけです。

でも、この主人公の女性の勇気、大胆な行動はすごいですね。
日本だったら、「もう熟年だしまあいいか。他には何も文句ないし」、「ないならないで、違う方法で絆を作ればよいか」ということになりそうですが、
「いくつになっても女性として見られたい」という欲求と、相手はもう自分に性的に興奮しないのか、という事実に直面するかもしれないところにも、あえて向き合っていくところがバイタリティがあるというか、そこがアメリカ人らしさなのかなとも思います。

初回のカウンセリングでは、カウンセラーが夫婦に次々と露骨な質問をぶつけていきます。
夫の抵抗ぶりが半端ない。まず、自らの意思で関係を修復したいと願って受けに来ているわけではないし、特に“問題”がない(状態が安定している)ところに、あえてメスを入れて破壊する必要がないという現状維持への願望が、彼の心に防衛を生み言動として現れます。

これも、心理の世界ではよくあることです。
まず、男性は概ね他人に心を開くことが苦手。深い人間関係を築くことへの不安も女性以上に強いのです。
しかし抵抗が強ければ強いほど、その裏には「ほんとうは変わりたい」という欲求が秘めているわけなので、そこを見抜いていかにその抵抗に怯まないかなどがカウンセラーの実力にかかっています。
この夫の抵抗・自己弁護に対して、クールにシリアスに対応するカウンセラー(スティーブ・カレル、コメディ俳優だそうです)の演技もなかなかよかったです。

妻の方は、自分からカウンセリングに申し込んだのですから、カウンセラーの露骨な質問にたじろぎつつも、積極的に自分の本音を開示していこうと努めます。
そこからケンカがはじまったりもしますが、それがお互いを知る大切なプロセスなのかもしれません。

さてさて、セッションでは毎回翌日までの課題が出ます。
最初の課題は、「今晩しばらく抱き合ってください」・・・。

なんでもいきなり高いハードル(レスの解消)から挑戦するのではなく、まずは乗り越えられそうな小さなところから始めるのがよいのです。
しかし長いことそういうシーンがなかったとしたら、、、これまた気恥ずかしくて抵抗マックスです。
それでもなんとか、「課題」に取り組む2人・・・。

セッションを重ね状況は一進一退しますが、一時はもう修復不可能かというところまで関係が悪化します。
でも、カウンセリングは無意味ではなかった。
自分と相手を見つめ直すことでお互いを思いやる気持ちを思い出し、乗り越えたいという欲求が2人をもう一度結びつけます。

ここでも描かれていましたが、結局のところ、問題は心が通い合ってないことだった。人間関係の大半の原因は、コミュニケーション不足と言われます。
この二人に関しても、決して愛情がなくなったわけでも、本当に性的に終わっていたわけでもなく、お互いの誤解が問題だったのです。

妻は、「夫が求めていたのはわたしではなく、あれ。自分はもう女性として見られていない」と思っていたし、夫は「不安」だった。妻が嫌がっているのではないかと・・・。
女性側は、性と愛情を結び付けていて、男性側は、性は性、愛情は愛情、と分けてみている。これも典型的な男女の違いで、それを理解することも大切ですね。

「ある時点から、、、考えなくなりました。セックスや夫のことを。失ったものを考えると悲しくなって・・・」
「わたしはセックスではなく、あなたが欲しかった。」
「わたしはもうセクシーじゃない。不器用だし・・・」

「嫌がる相手とはやりたくない」
「簡単に切り替えられない。オフにしたらオフのままだ」

そうやって隠れていた本音が次々と出てくる。
いきなり自分や相手の本音に直面するのは、その時はとても居心地が悪いけれど、お互いの心を言語化していく作業、とても大事です。

長年一緒にいる相手にさえ(だから?)、自分の心をオープンにするというのがどれだけ難しいことか、、、。
お互いに、「これだけ一緒にいるのだから、わかるのが当然だ」と思っちゃうのですね。
自分の心をオープンにする以前に、自分自身を騙していることにさえ、わたしたちは気づいていないのです。

問題の原因は、コミュニケーション不足で、そのさらに奥にあるのが、潜在的な劣等感、自己否定、恐れ。
相手を知る、自分を知る、それをどこまであきらめないか、が親密な人間関係を作っていくための要となります。

相手との間にすれ違いが出てきたな、と感じたときにわたしがするのが、これ、と、これです。
どれほど問題が複雑になっていても、これをやると意外なほどあっさり解決したりします。

それから映画の中で、カウンセラーが言うセリフが秀逸でした。
「愛する人に触るのは簡単だと思うでしょうけれど、難しいんです」という妻に対して、
「性の対象ではなくて、愛する人を喜ばせることが大切だ。自問してください。その人は自分のプライドより大切か」

「片方が不幸な場合、バランスを取り戻すか、あるいは・・・。
アーノルド、あなたには後悔してほしくない。もし彼女が・・・何かやるなら今ですよ。自問してください。手を尽くしたのか。それが全力ですか」

「その人は自分のプライドより大切か」

「手を尽くしたのか。それが全力か・・・」

とてもとても大切な“問い”ですね。誰かとの関係が大変になったときは、ぜひ思い出したいものです。

それから、修復が困難な関係に陥っている場合、問題を作った2人で問題を解決するのはとても大変だと思うので、修復不可能だと諦める前にぜひカウンセリングを利用してみてくださいね。見えていなかったところに光が当たることで、どんなに絶望的な状況に見えても、変容させることは可能です。

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